いぬのいる島

日々、散歩しては迷っている

3月12日(火) すぐには元気にならないし、元気じゃないとまともに思考もできない 無念の『ゴースト・トロピック』

 

昨晩、早い時間に寝落ちしたからか、夜中に目が覚めた。この時は体調が持ち直していて、心底安心した。しかし、朝8時半ごろにもう一度起きた時にはなんだか眠くて体はだるく、まだ体調が不完全なことがわかる。

 

30代も半ばになってからというもの、二日酔いが飲んだ次の日に治るものではなくなってきた。悲しいが事実だ。それでも昨日無駄にした時間というものを思って、自分に焦燥感を覚える。寝ていればいいのに、それではもったいなくて、動こうとする。

 

外は雨だった。一度コタツに入って、せめて日記くらいは書こうとPCに向かうが「カミナリの記録映像」を見ていたらいつの間にか3時間経っていた。そろそろ出かけようと1時間くらいかけて支度をして、雨の中バス停へ向かう。今考えると地下鉄で向かえばよかったのだが、なぜか時間のかかるバスを選んでいた。

 

雨が激しく降るなか、バス停に着くがバスは来ない。ずっと待つ。バス停の屋根が雨漏りしていて、肩に雨粒が滴ってきたのでハンカチを取り出そうとポケットを探るが、持っていないことに気が付く。わたしはド級の汗かきなので、冬でもハンカチは絶対にもっておくマストアイテムなのだが、忘れた。バスも来ないし、雨漏りはわたしを濡らし続けるし、それを拭くためのハンカチは忘れてきたし、帰りたくなってきた。でもその決断もできないほど、調子が悪い。

 

やっときたバスに乗ってぐったりと席につく。虚な目で車内の空を見つめ、雨の湿気を鼻の奥に感じながら、京都駅まで向かう。ホワイトデーのお返しのお菓子を買いに来たのだ。伊勢丹の地下のお店を目指していたのだが、観光客がたくさんいて、デパ地下はあまりに混んでいた。人酔いする。

 

それでもなんとか目当ての商品を買ったら、今度はお腹が痛くなる。どこかでトイレを借りようと、伊勢丹のフロアを渡り歩く。悪夢か、と思うくらいトイレの個室どのフロアも満員で、結局8階だったかのトイレに駆け込んだ。

 

安堵したら、ちょっと意欲が上向いてきた。すると、伊勢丹に併設している京都駅の駅ビルのなかに「京都拉麺小路」があることを思い出した。「京都拉麺小路」とは、全国各地のラーメンが楽しめる拉麺テーマパーク的なフロアのことだ。このフロアに出店しているお店の「ラーメン東大」という徳島ラーメンのお店は、わたしが大学生時代に友人とよく行っていた思い出の店だ。昼食はこのお店に行こうと思った。

 

いま考えても冷静な判断ができていないのだが、大学生時代はともかく、現在の京都駅の駅ビルは大変な観光客だ。京都拉麺小路も混んでいるのは目に見えていた。だから最近全然行っていなかったのだが、それでもわたしは向かってしまった。お店に着いた時点で列も確認しておきながら、そこでも考えられていないので、店の前まで来た流れで食券を購入して列の最後尾に着いた。

 

並んでいるとだんだん自分が汗をかいてきたことに気が付く。厚着しすぎたところに、フロアの空調があたたかい。コートを脱ぐが、汗が止まらない。体がだるくなってくる。後ろには列が続く。汗を拭うハンカチもタオルも持っていない。待ち時間は永遠に感じられ、じっとりと全身にかいた汗が気持ち悪い。もう食べずに帰ろうかと思うこと数回目で、入店の呼び出しがかかった。

 

入店してもわたしの不安は続く。ラーメンも温かいのだから、さらに汗をかいて気持ち悪くなるのではないのか。座って憂鬱な気持ちで待っていると、席に着いたわたしへの空調の風が心地よい。そこはさすがラーメン屋さんであり、熱いラーメンを食べるお客さんのためにクーラーを効かせてくれているのだ。ありがとうラーメン東大。ここでひと心地ついた。思い出のお店に救われた思いだった。おじさんが汗をかいて気持ち悪くなっているだけで、別に大したことではないが、本当にしんどかった。

 

懐かしの京都拉麺小路 「ラーメン東大」

 

ラーメンはおいしくて、ラーメン屋で食べる機会がそれまでなかった10代の頃は、何個でも無料の生卵に驚いたのが懐かしい。すき焼きのような醤油メインの甘辛いスープに甘辛い牛肉がおいしい。あっという間に完食した。食事以上の感謝を持って、「ごちそうさまでした」と言って店を出た。

 

 

地下鉄に乗って移動。なんだか元気になったので京都シネマで、映画を観ようと思った。先日観て、とてもよかったバス・ドゥボス監督の『ゴースト・トロピック』だった。

 

 

美しく繊細な映像で物語を紡ぎ、カンヌ国際映画祭ベルリン国際映画祭でも注目を集めるベルギーの映画作家バス・ドゥボスの長編第3作。ブリュッセルの町を舞台に、最終電車で乗り越してしまった主人公が真夜中の町をさまよい、その中での思いがけない出会いがもたらす、心のぬくもりを描く。

参照元:映画.com)

 

 

しかし、この選択も間違いだった。あまりに眠くてまともに観ていられなかった。普段は映画を観ていて眠くなることはあまりないのだが、その穏やかな作風もあり意識を保てない。それでも観たいので、太ももの皮膚を自分でつねったり、息を止めたりと策を弄して無駄な抵抗を行った。まともな視聴状態ではない。映画館は暗闇なので、誰も見ていなかったとは思うが、その時のわたしの姿はかなり滑稽だったと思う。

 

そんな状態で観た感想で申し訳ないが、『ゴースト〜』もかなりいい映画で、その空気感の描写はすでに発揮されている。個人的には『Here』に比べると映像の質は低く感じたが、それでもやはりかなり高いレベルの話で、むしろここから『Here』までの高めかたがすごい。やっぱりもっとまともな体調で観るべきだった。行けるなら、もう一度観にこよう。

 

 

地下鉄で帰宅。地下鉄ホームにあるローソンでバッテリーを1個回収した。しかし、これ以外のバッテリー作業は今日もお休みだ。無念。帰宅途中で夕飯の材料を買う。家に帰ってまたしばらくぐったりしていた。自分の体調の悪さが情けなくなってきた。それでも今日はパートナーに夕飯を作らねばならない。彼女はきっと「体調が悪いのに無理して作る必要はない」と思ってくれるだろうけど、このままではわたしが悔しいのだ。

 

もはや我が家ではお馴染みの『菱田屋』のレシピ本から鶏つくねを作る。ひじきを水で戻して、豆腐はキッチンペーパーで水を切り、にんじん・玉ねぎは5ミリにみじん切りして、冷凍枝豆は流水解凍しておく。それらをフライパンでさっと炒める。ボウルに鶏ももの挽肉と塩ひとつまみを入れよく練っておき、ごま油・生姜汁・片栗粉といっしょに先ほどの野菜類と豆腐を混ぜ込み、成形した。フライパンで蒸し焼きにして、醤油ベースのタレとからめて完成。付け合わせにポテトサラダと味噌汁も作って、レタスとトマトのサラダも作ってパートナーの帰りも待った。

 

 

彼女が帰ってきて一緒に食事をする。わたしはすこし元気になったけど、彼女への会話はそっけない。彼女はできた人なので、それをわたしの調子がよくない兆候だと受け取ったようだった。ふたりで「もやもやさまぁ〜ず2」を見ながら食事をとった。

 

食後に、彼女に「明日は仕事で夜いないので」とホワイトデーのプレゼントを渡した。このときまったく気がついていなかったのだが、ホワイトデーは明後日だ。本当にこのとき頭がまともに働いていなかった。

 

お返しのプレゼントは、わたしの知り合いがデザインを担当した化粧品ブランドのラインナップのひとつであるルームフレグランスと、彼女の好きな芋けんぴのちょっとだけ高級なのをあげた。この芋けんぴを、日中に伊勢丹の地下まで買いに行っていたのだ。彼女は喜んでくれて、早速芋けんぴを食べ始めた。わたしも少しもらったが、上品なお味で美味しかった。

 

彼女が喜んでくれた安心感でわたしはそのままこたつに入って寝てしまった。目を覚ますと彼女が風呂から上がっていたので、わたしも風呂に入った。上がると彼女が皿洗いを済ませるところで、わたしが「ありがとう」と礼を言うと「皿が割れちゃった」と割れた取り皿を見せてくれた。お皿はいつか割れるものだから、仕方ないねーとわたしは答える。

 

彼女は先に寝室へ。わたしは仮眠をとって少し元気になったので、またpanpanyaの『商店街のあゆみ』を読んでいたけど、またすぐに眠気がきて、就寝。