いぬのいる島

日々、散歩しては迷っている

3月9日(土)   日記に書き切れないほどたくさんの人に会い、食べて飲む 映画『Here』

 

昨日の夜はなんだか変な寝方をしてしまったので、9時半くらいまで寝ていた。わたしもパートナーも今日は仕事は休み。わたしが先に起きて、音楽を聴きながらコーヒーを淹れて日記を書いていると、彼女も起きてきた。今夜はご飯を一緒に食べに行こうと数日前から話していたので、それまでは各々の過ごし方をする。

 

パートナーは昼から友人らとご飯を食べにいく。わたしは明日、友人の家に遊びに行くので、その持ち寄りの飲み物と食べ物の買い出しをして映画を見ることにする。

 

お昼前にインターホンが鳴った。宅配の配達員さんだ。中身は、先日ふたりで見に行って注文した結婚指輪だった。わたしはテンションが上がり、なんとかふたりで一緒につけようと思ったのだが、パートナーは「もう出発しなきゃいけないから」と、さっさと出かけてしまった。部屋でひとり、指輪を指にはめてみたが、そっと外す。

 

今日は天気がいいと思って洗濯をしたのだが、急変して霰が降ってきた。昨日から関東では大雪だと予報で言っていたので、それに比べれば大したことはないのだが、3月の霰は珍しいのでしばらく見ていた。外が霰でも洗濯物は干す。

 

洗い物も済ませて、日記を書いて支度をする。本当は映画を2本見ようと思っていたが、けっこう厳しい時間になっていた。まずは近所にあるワイン屋さんで明日持って行くワインを買うことにする。霰が降り続けていたので傘をさして歩く。お店までは、徒歩10分くらいだが、その間にも降ったり止んだり、陽が差したり曇ったりで、春の不安定な天気。

 

ワイン屋さんは「ストレイワイン」というお店で、京町屋を改装してワイン販売と立ち飲みをしているお店だ。前に一度、明日集まるのと同じメンバーでの同じホームパーティーの際、やはりここでワインを選んだのだった。その時はフワッとしたリクエストしかできなかったけど、店主の方が一生懸命おすすめを選んでくださってそのワインは好評だった。

 

その後随分時間が経ってから、他のお店でお酒を飲んでいた時に偶然、店主さんと隣になってお話しをしたことがあった。それ以来会ってはいなかった。今日お店で少し話したら、以前飲み屋で話した時の、酔っ払ってあやふやになっていた記憶をうっすら思い出してくれた。その曖昧な記憶の感覚はわたしもよくわかる。話していたら楽しくなってきて、持ち寄るためのワインを選んでから、立ち飲みで一杯飲むことにした。ビーフシチューで飲む。

 

1本目の映画は諦めた。

 

ストレイワイン店主のMさんと話していると、近くのアンフルネというお菓子屋さんで女性感謝デーにちなみんだイベントをしているとのこと。「ミモザ」をテーマにしたイベントだそうだ。アンフルネは以前行こうとしてみたことがあったのだが、曜日と時間帯が合わず、入ったことがなかったお店だった。Instagramで調べてみると、イベントではお菓子のほかに、いろいろなお店が出店して、お酒やそのアテ、コーヒーの販売もしているということだった。ストレイワインの他のお客さんにも「大体混んでるけど、この時間なら空いているんじゃないですか?」と言われて行ってみることにした。

 

イベント終了まで1時間ほどになっていたので、お店には余裕があった。入ってすぐにアスパラのキッシュとビールをいただく。どうやら普段は商品が陳列してあるカウンターをスタンド使いしてテーブルにしているようだった。

 

お昼を食べておらず腹が減っていたので、アンフルネ特製のフォカッチャに、ロカレという三条商店街にあるイタリア料理屋さんのお料理を挟んで食べられるサンドイッチも注文。最後にWestend Coffee Roastersのコーヒーを飲んで満喫した。お店の方々も楽しそうに仕事をしていて、寒い日ではあったがあたたかい気持ちになる店内だった。わたしが入った時点でお店のお菓子や食べ物はほとんど売り切れいていたので、その盛況ぶりも推し測れた。壬生で多くの人に愛されるお店なのだろう。

 

アンフルネ×ロカレのサンドイッチ

 

16時前に店を出て、一旦ワインを置きに家に帰る。するとパートナーが帰宅していて、わたしは今行ってきたお店の話をする。彼女にはお土産として、先ほどのアンフルネで最後の一個になっていたロカレのチョコラスクをあげた。

 

それから、RUTUBO第二燻製工場という燻製立ち飲み屋さんへ。ここではお持ち帰りで、明日の食事会に持って行く燻製を4種類買った。わたしはこのお店では基本的に飲むばかりで、名物の燻製のお餅買えるはあまり買ったことがなかったので、こういう特別な機会に楽しめるのは嬉しかった。お店はオープンしたての時間だったがすぐに混んでカウンターがどんどん埋まっていった。

 

 

買い物を済ませて、京都シネマへ。バス・ドゥボス監督の『Here』という映画を観に行く。

 

 

世界的に注目を集めるベルギーの新鋭バス・ドゥボスが監督・脚本を手がけ、植物学者の女性と移民労働者の男性が織りなす些細で優しい日常の断片をつづったドラマ。

 

ベルギーの首都ブリュッセルに住む建設労働者の男性シュテファンは、アパートを引き払って故郷ルーマニアに帰国するか悩んでいる。シュテファンは姉や友人たちへの別れの贈り物として、冷蔵庫の残り物で作ったスープを配ってまわる。ある日、森を散歩していた彼は、以前レストランで出会った中国系ベルギー人の女性シュシュと再会し、彼女が苔類の研究者であることを知る。シュテファンはシュシュに促されて足元に広がる多様で親密な世界に触れ、2人の心はゆっくりとつながっていく。

参照元:映画.com)

 

とても美しい映画だった。画面のなかの影と光の構成が抜群にうまく、どこで止めても絵画のような美しさだった。この映像を5:4というちょっと珍しい比率の少しだけ縦長の画角でスクリーンに映し続ける。この監督が撮れば、どの街でも美しく見えるのだろうか。ゴミの落ちた道を撮っても、魅力的に見せていたのがすごすぎた。

 

ストーリーは上記のあらすじの通りなにか特殊なことが起こるわけではない。人が人と会い、人と別れ、また出会う。そんな映画だ。だけど、そこが良い。この小さな画面サイズにピッタリと合うミクロな物語だが、その「小さな物語」が持つ普遍性みたいなものが世界に開かれていて、気持ちよかった。素晴らしい映画だ。

 

『PERFECT DAYS』の比率4:3のスタンダードサイズもそうだったが、小さい画角の映画の良さが最近やっとわかってきた。あのサイズで描かれる小さい物語のほうにわたしの好みが変化してきたのかもしれない。

 

どのシーンで止めても美しい映像だけでできている映画では、最近観たのだと『瞳をとじて』が思い浮かぶ。やっぱり良い映画だった。気の抜けた画がまったくない作品たち。バス・ドゥボス監督はすでに有名だけど、将来はもっと有名になるだろうな。それこそ、『瞳をとじて』のビクトル・エリセ監督のように。京都シネマでは、バス・ドゥボス監督の過去作、『ゴースト・トロピック』も上映しているので、こちらも是非観にこよう。

 

帰宅前にマップを開いて、バッテリー作業依頼を探した。京都シネマ近くのコンビニにノルマの5個のバッテリーを補充してノルマ完了。

 

 

家に帰り、パートナーと合流して、夕飯は二条駅の近くの中華料理屋さん「中國菜 大鵬」へ。このお店はランチで利用したことがあった。名物の「てり丼きんし」がとても美味しいのだ。お昼も並んでいる人気店なのだが、夜はさらに激戦のようで、事前に予約の電話をしてみたが「予約席は満席なので、直接お店に来ていただけたら順番にご案内します」という返答をもらったのだった。

 

寒いなか「空いてるかな?」と期待しながら歩く。お店の前にはすでに人がいて、ちょっと覚悟する。しかし、路上に設置された灰皿の前でタバコを吸っている二人組だった。「イケるか…?」とまた期待が戻ってくる。店内に入り、どれくらい待つか聞いてみると、「10分から20分」と返答が返ってきた。予想待ち時間の半分くらいだったので、胸を撫で下ろした。

 

お店の前のベンチに座り、お店の前の公園を眺めながら話をして待っていると、すぐに声をかけられた。店内は賑やかで、それぞれのお客さんが楽しそうにご飯とおしゃべりをしていて、観光客というよりは地元の人たちが多そうだった。

 

わたしたちは「本場牛肉麻婆豆腐」「いろいろ野菜いっぱいと豚肉炒め」「水餃子」「やきめし」を注文した。ビールとジンジャーエールで乾杯。すべて美味しいのだが、「水餃子」は皮はモチモチして食感が楽しく、中の餡はしっかりとした肉の組み合わせが美味しい。「麻婆豆腐」は塩味が強く辛いのに、後まで旨味が口のなかに残ってレンゲが止まらない。

 

しかし、特筆して美味しかったのは「いろいろ野菜いっぱいと豚肉炒め」と「やきめし」で、「いろいろ野菜いっぱい〜」は一見して普通の野菜炒めなのだが、すこし酸味が効いていて(おそらく黒酢)、カリフラワーや牛蒡なども入っているのが嬉しく、絶妙にやさしい味付けだった。無限に食べられる、とふたりで笑顔になる。家でも再現したいと話して、ずっと調味料の分析をしていた。「やきめし」もこれまた「この味が食べたかった!」という美味しさで「もうちょい」「あ、もう少し」と言い合いながら、ふたりで取り合いになった。

 

中華料理屋さんでいろいろな料理を取り合うのが好きだ

 

今回はメニューブックにあるいわゆるグランドメニューを食べたので、次回は店内のブラックボードに書いてあった「本日のおすすめ」を食べてみようと決めて名残惜しくもお店を後にした。

 

店を出て帰るか迷っていたのだが、今夜は友人のYさんが木屋町松原に最近できたおしゃれな飲み屋さん「the sunset beach」で働いているというので行ってみることにした。

 

向かう道中、わたしのスマホのバッテリーが切れそうになっていることに気がつき、四条通りのステーキ屋さんで回収依頼のあったバッテリーを1個回収した。お店に入ると、店内に誰もいない。調理場の中東系の男性がわたしに気がついてホール担当の店員さんを呼んでくれた。だんだん店内の状況がわかってきたが、どうやら一組だけいるお客さんのまわりに他の店員さんがぐるっと取り囲む形で立っている。話すわけでもないようなので、食事を見守っているのだろうか?

 

一場面だけ切り取ると状況がわからないが、作業をこなして店を出た。京都の夜は不思議なシーンに出会うことが多い。

 

歩いてthe sunset beachに向かっている最中に猛烈にトイレに行きたくなった。お店までは、四条通からしばらく距離があった上に外は寒く、大鵬で飲んだビールも効いていた。かなり限界だった。ほとんど冷や汗をかきながら入店。目が白黒しているのが自分でもわかった。Yさんとお店の人への挨拶もそこそこにコートも脱がず、リュックも背負ったままトイレに入る。………間に合った。

 

the sunset beachさん、Yさん、本当に失礼いたしました。

 

the sunset beachは初めて来店したお店。人気で入れないお店だと聞いていたのだが、21時を回っていたからかカウンターに通してもらって絶品料理をいただいた。ポテトサラダと灰干し穴子を使った蕪蒸しを注文した。そして美味しいと聞いていた生ビールを注文した。この生ビールが本当においしくて、よく生ビールの泡の美味しさを「クリーミー」と表現することがあると思うが、本当に生クリームのような風味がするのだ。ホワイトビールの香りに近い生ビールは絶品だった。

 

おどろくべきクリーミーさ。the sunset beachの生ビール

 

もちろん、料理はどれも美味しくて、2軒目に行くのがもったいないと思ってしまった。もっといろいろな料理を食べてみたいお店だ。それと、Yさんは昼間は本業で働いてからヘルプで入っているというのを聞いて、その労働意欲の高さ、体力の豊富さ、バイタリティに感動する。

 

その近所のドラッグストアでバッテリーをさらに4個回収して、家に帰った。今日はいろいろなお店にいき、いろいろな人に会った。良い映画を見て、美味しいご飯を食べて、盛りだくさんな1日だった。日記に書き切れないくらい盛りだくさんで楽しい1日だった。

 

シャワーを浴びて、幸福感に包まれて就寝。