いぬのいる島

日々、散歩しては迷っている

4月12日(金) レボリューションブックス8周年 中年男性、深夜に号泣す

 

昨日は映画のあと0時を過ぎて帰宅し、寝るのが遅くなったせいで、朝はまだ眠かった。しかし、今日は朝から仕事で早起きしなければならず、つらい。昨晩のお酒が残る事態も心配していたが、そちらは大したことがなくてひと安心だ。まあ『オッペンハイマー』鑑賞中はペプシコーラ飲んでいたから。

 

同じタイミングで出勤前の支度をしていたパートナーと朝ドラを見ながら、主人公の女性のあまりにもまっすぐな台詞に「うわー泣きそうになるー」と笑い合ったが、実はわたしは本当にちょっと泣いていた。最近、涙もろいというか、特に若い人が頑張っている姿を見ると、それが現実でも創作でも泣きそうになる。小さい頃にうちの親や周りの大人たちが「涙もろくなった」と言っていたのが、もしかして“これ”なのか。老いたものだ。でも涙を流すという行為は割と悪くない。目がスッキリする。

 

今日は、というか今日も、夜は飲みにいくのでその時のことが楽しみで、仕事に行く体が軽い。業務も快調に終わらせてやった。

 

 

今日はわたしの愛する立ち飲み屋である、西木屋町の「レボリューションブックス」さんの8周年の記念日なのだ。店主のNさんは、昔「お店の周年記念日はお店が祝われるのではなくて、お客さんに感謝するべき日ではないか」と仰っていた気もする。だが、それでもやっぱり大好きなお店には、お祝いをするという名目で飲みに行きたいのが、酒飲みの心模様だ。それはたとえ、昨晩、当のお店で生き恥を晒していたって止められない。こう書いていて、我ながら迷惑な人間だと思う。いつもお世話になっているうえに、自分勝手で本当にすいません。反省しても反省しても、ダメなところがなおらない。

 

というわけで、仕事終わりにレボリューションブックスへ。当然のように、常連の方々が集まる。そして昨日のわたしのどこがどうだめだったか、問題点を挙げられる。「相手がテンションのエンジンを温めて暖気運転しようとしている状態なのに、それに気がつかないまま、テンション6速で突っ込んでいくようなところ」がよくないということだ。たしかにその通り。反省です。

 

そんな話でも、わたしはとても楽しい。われながらなんと厚かましいのだろうか。そんなにわたしを楽しませてくれるこのお店はなんてすてきなんだろう。今日もまた生き恥を晒した。周りに迷惑なふるまいもあったかもしれない。でも前日よりはマシだったはずだ。たぶん。わたしだってこの次は、より自分のことを好きだと思えるおじさんになりたい。そして、そんなダメ人間でもカウンターに寄せてくれるこのお店には感謝ばかりだ。

 

昨日レボで会った、常連のお客さんであるIさんに「昨日駆けつけた『オッペンハイマー』にはなんとか間に合いました」と伝え、Iさんには最近Iさんが行った旅の話を聞いた。とてもおもしろい。また、カウンターの位置が隣になった初対面の女性と話をしていると、彼女の前職がわたしの前職と一緒の会社だったことがわかり、盛り上がった。店主のNさんに「知り合いだった?」と聞かれるが、初対面ですーと答える。ここでは挙げられないほど、いろいろなひとたちと楽しく話をして、あまりの楽しさに結局閉店間際まで長居してしまった。いい夜だった。

 

ことしもまた「最高の夜」が更新された

 

レボリューションブックスを出て、そこからSpotWORKのマップを開く。するとこの木屋町エリアでは、いつもバッテリー回収業務でお世話になっている「ZINO」というカラオケとダーツのバーのお店が、今日も1個のバッテリー回収依頼を出していた。

 

いつもはバッテリーを回収したらさっさと帰るのだが、この夜は相当楽しかったので、調子に乗ってお客さんとしてお酒を飲むことにした。カウンターのお兄さんに「ここは誰でも自由に歌えるバーで、他のお店に比べるとかなり良心的な値段なんですよ」と聞く。どうやらこのお兄さんは店長的なポジションのようだ。「ぼくはこのお店で働くのが好きなんです」と言っていて、とても好感を持った。あとさすがというか、他のお客さんに誘われて歌いはじめると、お酒を作るながらでもめちゃくちゃカラオケが上手かった。

 

唐突だが、わたしも歌いたいと思った。しかし、周囲はは誕生日を祝っている若者の集団や、睦まじく話しをしてはお互いのためにラブソングを歌い合う2人組しかいない。だが、わたしは酔っていた。こんな状況でも関係ない。歌いたい曲を歌わせてくれ。このあたりで、「もう明日起きたら今日のの記憶はないだろうな」と思っていたので、もはややりたい放題だった。デンモクKing Gnuの「白日」を入れると隣で誕生日を祝っていた女の子が「やるやん、おっちゃん」的なことを言って場を和ませてくれた。歌い始めるが、当然高音が出ない。するとその女の子が、高音パートを一緒に歌ってくれた。おじさんは若者の優しさに感動した。

 

しみじみ飲んでいると、わたしの好きなアニメ『桜蘭高校ホスト部』の主題歌「桜キッス」が入った。大学生だろうか、若い男の子が歌っていたのだが、周りにそんな昔のアニメの曲を知っている人がいないのであまり盛り上がらず、途中で歌うのをやめてしまった。残念だった。わたしの盛り上げが足りなかったせいだ。わたしは他の若い子に優しくしてもらったのに、自分は動くことができないのか。

 

今度はわたしが「桜キッス」を入れる。こうなりゃヤケだ。その男の子には申し訳ないが、ウザ絡みすることを決意する。カウンターで隣り合った青年に「申し訳ないのですが、動画を撮ってもらってもいいですか?」と聞くと「ぼくカメラマンやってます」と返され、失礼を謝りつつ撮影をお願いした。

 

先ほど「桜キッス」を歌うのを中断した男の子のところに行き、「おじさんも好きな曲なんだ。一緒に歌おう」と言う。戸惑う男の子。当然である。しかしわたしは歌い、そして踊る。男の子は完全に引いてた。でもわたしは楽しくなってきて、動画も撮ってもらっていたし、逆立ちとかしていた。こんなテンションが壊れたおじさんに絡まれて相当怖かったと思うし、普通に迷惑だ。本当に申し訳ありませんでした。名も知らぬ男の子よ。しかし、青年は一緒に歌ってくれた。すごい嬉しかった。

 

2人で歌ったあとに話をしたら、『桜蘭高校ホスト部』のアニメを見て「桜キッス」が好きになった、とのこと。ふたりでアニメの好きなシーンの話をして、最後に握手をした。うれしかった。けど申し訳ない。床に手をついて逆立ちしていたその手を洗わずに君と握手してしまっていたよ。ごめんよ。そしてありがとう。わたしは店を出た。

 

ちなみに後で撮ってもらった動画を確認したら、自称カメラマンの青年はわたしのことをほとんど撮らず、店の中で楽しそうに過ごす他のお客さんの様子を撮っていた。まあこういうこともある。

 

帰りにスーパーに寄って飲み物を買うことにしたのだが、その店内で突然涙が溢れて止まらなくなった。今夜があまりに楽しくて、知り合いも、見知らぬ若者も、みんながわたしに本当に優しくて、なんだか涙が止まらなくなった。情緒不安定か。精神異常か。自分でも泣き始めたことに動揺しているのがわかる。

 

このスーパーは深夜まで開いているスーパーで、深夜に仕事を終えることがあるわたしも通う近所のお店だ。深夜勤務のおばちゃんも個人的に話したりはしないが、顔見知りと言っていいと思う。しかし、たまに来る、顔くらいは知っている成人男性が号泣しながら精算するという状況にかなり引いていた。それはそうだと思う。関わらないようにしよう、ということなのかもしれないが、いつも通りレジを済ませてくれて本当に助かった。

 

涙が止まらないまま帰宅。風呂から上がり居間でテレビを見ていたパートナーが、嗚咽しながら号泣するわたしを見て心配してくれる。「どうやって涙を止めていいのかわからないが、大丈夫だ」と伝える。だんだんと落ち着いてくる。落ち着いた。こんな自分の一面があったことに驚くが、パートナーはわたしが落ち着いたのを見届けると寝室へ消えていった。泣いたらなんかスッキリした。

 

まあいろいろあったが、とても幸せな夜だった。