いぬのいる島

日々、散歩しては迷っている

3月16日(土) 『句点。に気をつけろ』のトークイベントと美味しいお酒、そして卓球

 

眠かったけど8時前に起床。今日は休みだ。今日は1日いい天気で気温も20度を超えるとのことで、春の陽気。パートナーも今日は仕事が休みでまだ寝ていた。コーヒーを淹れて、日記を書く。朝食に前にYさんにもらったチーズクッキーを齧る。

 

洗濯機を回して、食器を洗い、支度を始めた。今日はお昼から恵文社という書店で『句点。に気をつけろ』のトークイベントを聴きにいく予定だったので、少し早めに家を出て恵文社の近くにある「通しあげ そば鶴」という蕎麦屋さんで昼食にしようと計画を立てた。

 

支度をしていると彼女も起きてきた。洗濯も終わったので、干して家を出る。SpotWORKのマップを開くとそば鶴までの道に2件の作業依頼があったので、バッテリーを合計で4個回収しながら向かった。休日の京都の街なかは、天気もよく暖かかったからか、人で溢れかえっていた。四条通河原町通の交差するビルの中にあるスマホ修理屋さんでの回収に向かう。このビルの前はよく通っていたのだが、こんなところにスマホ修理屋があるとは知らなかった。きっとUber eatsとかでも同じ感覚になるだろうが、アプリに表示されるお店が行ってみるまで本当にあるのかわからないのでいちいちドキドキする。

 

作業を終えて、一乗寺へ。鴨川の横を通ったが、春の陽気が気持ちよくて、河川敷を歩く人たちもどこか楽しげだった。一乗寺の「通しあげ そば鶴」は前から行ってみたかったお蕎麦屋さんだ。お店のSNSをフォローしているのだが、その投稿内容の写真がいつも美味しそうで、しかしちわたしの住む中京区からはちょっと遠くて行く機会を窺っていたのだ。お店に着くと、50歳くらいの男性と同じタイミングでお店に入ることになった。すると店員さんからは少し待ってと声をかけられ、お店の外でお互い無言で、そのおっちゃんと店先のメニューを譲り合いながら眺めて待つ。その無言の譲り合いがなんだかおかしかった。すぐに店員さんに案内されてカウンターに通してもらった。おっちゃんとは隣どおしだ。わたしは店先でなにを頼むかを決めていたのだが、カウンターに置かれていたメニューは店先のメニューの倍くらい品数が書いてあって思わず全部に目を通してしまった。

 

メニューの多さに圧倒されていると、隣のおっちゃんは「生ビールと、卵豆腐(あまり覚えてない)。それと〇〇丼の(聞き取れなかった)……、小さいのあったよね?」と尋ね、「ありますよ」と店員さん。「じゃあそれで!」とどこか小粋な感じで注文した。常連さんなのだろう。こんなにいい陽気だ、酒を飲まないでいられない。

 

わたしも生ビール、葱の天ぷら、せいろそばを注文する。隣のおっちゃんは生ビールを一気に飲んで「カァっ!」と言っていた。わたしも思わず「くぅ〜」と言ってしまう。美味い。カウンターの前では女性の店員さんが手際よくどのテーブルにどの料理を出すか手際よく指示を出して手を動かしている。気持ちのいい仕事ぶりだ。その後ろにある作りつけの戸棚は、店内の天井やテーブルと同じように年季を感じる濃い複雑な茶色をしていて、とても美しい。戸棚とそこに並んだ食器を見ながら酒を飲む。ほかの卓には次々と子供連れの家族が入ってきて、やはりこの町の蕎麦屋さんなのだと感じる。好きな雰囲気。

 

念願の「通しあげ そば鶴」

 

葱の天ぷらもせいろそばもとてもおいしかった。この後に予定がなければもう少し飲みたかったのだが、今日はイベントの時間があるのでまた今度飲みにくることを自分に誓って、店を出た。

 

そば鶴から恵文社は近い。イベントの開始予定時間の30分前に到着した。少し店内を物色してからイベントスペースの離れへ。まだお客さんはまばらだったが、椅子が向かい合うようにして並べてあるテーブルには著者であろう男性が座っていて、本の内容からイメージする著者像と、わたしのなかではピッタリくるような風貌だった。

 

著者の尹雄大さんの向かって右側の席に座って、ドッグイヤーがついた折り目だらけの本を読み返しながらイベントの開始を待った。イベントが始まると、尹さんは「なにか聞いてみたいことはないですか?あまり一方的に話したくはないんです」と話しはじめた。

 

みながいろいろなことを聞く。尹さんは本の内容に基づいて質問に答えて、しかもその返答は本の内容を補足するところまで話が及び、本を読んだだけでわからなかったかもしれない、感覚的なことも伝わってきて面白かった。わたしも質問をした。「わたしは先月から日記を書き始めたのですが、言葉にするとその時思っていた感覚を整理するように感じてしまって、複雑さを取りこぼしているような感じがあります。尹さんはこの本を書いたときにはそのように感じることはありましたか?」と聞いてみた。尹さんは「理論的ないわゆるうまい文章を、わたしは書けないので感覚的にこの本を書きました。でもそれが編集者の人には初めて「わかりやすい」と言われた。自分の感覚に向き合ってそのまま書くのがいいんじゃないでしょうか」という返答だった。わたしの質問は一体なにが聞きたかったのだろうか。自分でもよくわからない。でもこの返答で、わたしは学校で習うようなうまい文章を目指さないで日記を書いていいなと思えた。

 

そのほかに印象に残っているのは「言葉で説明できることは強度が弱い」ということだった。尹さん曰く「言葉で説明できるということは、解錠するのが簡単だ」ということで、その感覚はよくわかった。身体感覚で感情が起こるとき、わたしはその感覚を説明する言葉を持っていない。でも誰かに、もしくは自分に、その感覚を伝えたいと思って無理やりできるだけ近い言葉を手探りで言葉にしている節がある。だから日記を書く時も、なんとか上手いこと表現しようと言葉を探して、文章が長くなったり、ぐるぐるとその場で回っているような感覚があったりするのだろう。

 

イベントの2時間はあっという間に過ぎて、なんだか背中を押されるような気持ちで会場を出た。実際に著者に会って話を聞くことは、その人が存在するという事実だけで、本を読むよりも圧倒的な経験なのだなあ。わたしにとってとても意味があるイベントだった。ありがとうございました。イベントの中で質問者が話題にあげた尹雄大さんの『聞くこと、話すこと。』を買った。

 

 

イベントが終わって、恵文社の中を見てまわる。おもしろそうな本を見つけた。『アラバスターの手 マンビー古書怪談集』を買った。こういうちょっと怖そうでヘンテコそうな本に食指が伸びる。

 

 

背中のリュックサックに感じる本の重さが心地いい。店を出て、またマップを確認する。帰り道にコンビニでバッテリーを補充した。そのままアートギャラリーの「VOU / 棒」へ。好きなイラストレーター伊達努さんの「スゴロク水滸伝」という展示を見に行った。すごい個性だ。「スゴロク作りたかったんですよ」と、在廊していた伊達さんが話していて、わたしも小学生のころ自由帳にスゴロクを書いて、自分のオリジナルキャラクターを描いていたことを思い出した。他の友達に遊んでほしくておすすめもしたのだが、一緒にスゴロクを作って遊んでくれたのはHくんひとりだけだった。彼とはもう連絡をとっていないが、元気だろうか。元気だといいな。

 

あまりに気候がいいので、飲まずにはいられず、西木屋町のレボリューションブックスへ。馴染みのお客さんと話をして美味しい料理とお酒を飲む。今日のトークイベントを聞いて、人と話すことは楽しい体験なのだと改めて感じた。

 

レボを出て、家に帰る。今日は、もしパートナーの気分がノったら近所にできた卓球場に体験に行ってみようと話をしていたので、「ノってる?」と聞いたら、「ノっていなくもないよ」という返答があり、ふたりで卓球に行ってみることにした。

 

飲み屋がたくさん入ったビルの3階にあるその卓球場に入ってみると、4人くらいの人が卓球台を挟んでピンポン玉を打ちあっていた。「卓球体験にきました」と言うと、スタッフの人がとても明るく接客してくれた。

 

パートナーと卓球台を挟んで向き合い、とりあえずラリーを20回続けることを目標に打ち合った。ピンポン玉をラケットで打ち返す感覚が手に伝わって心地いい。ちなみにこの後、彼女と11点先取ルールで試合をしてみたが、彼女に連敗。ついに勝つことはなかった。この人こんなに卓球できたんだ。一緒に住んでいるのに知らなかった。

 

いい汗をかいて、近くにある居酒屋の「ふる里」へ。人気なお店なのは知っていたので、ふらりと行って入れるとは思っていなかったのだが、ちょうど席が空いていたようで座敷に通してもらった。このお店はなんと言っても海鮮が美味しい。お造りの盛り合わせとなまこの酢の物をいただく。わたしの実家は海の近くで、なまこの酢の物はよく食卓に上がっていた。実家を離れると食べる機会はぐっと減ったが、わたしにとっては故郷の味だ。まさに「ふる里」。懐かしかった。でも故郷の味だけでは満足しないのが人間だ。そこでオムそばを注文したのだが、このオムそばがとても実家感があった。わたしが子どもの頃、わたしの祖父が、小さいわたしと姉が喜ぶだろうと卵が薄焼きのオムレツを作ってくれたのを思い出した。やはり「ふる里」の味だ。とても懐かしくて、おいしかった。

 

なつかしい故郷の味

 

気持ちよく家に帰った。いい1日だったなと思いながら、お風呂に入って就寝。