いぬのいる島

日々、散歩しては迷っている

3月3日(日) 長い1日と海外の文化 映画『アメリカン・フィクション』

 

朝はいつも通りの時間に起床。今日は昼過ぎから深夜までの仕事なので、昼寝をすることにして、想定していたよりも早く起き出した。昨夜コタツに刺さったまま寝ていたパートナーは結局、朝まで居間で寝つづけていたようで、わたしが居間に行った時には起きていた。

 

そもそもパートナーが疲れてもベッドではなく床で寝ているのは、昔わたしが同棲をはじめるにあたって定めたルールが原因だ。そのルールとは「風呂に入らないと、ベッドに入ってはならない」というもの。これはわたしがベッドを清潔に保ちたいと思っているからなのだが、一方で彼女は風呂自体は好きなのだが、風呂に入る際の手間がめんどくさいタイプ。だから、彼女は疲れてしまうと風呂に入るよりも床で寝るほうを取ってしまう。でも当然床で寝ると疲れはうまくとれないし、その疲れが彼女の体調に悪影響を及ぼす。もちろん、風呂に入って疲れをとって、ベッドでしっかりと寝るほうがいいの彼女だってわかっているのだが、彼女にとって疲れているときは特に、風呂に入ってベッドで寝るというのが難しいという事実は認めなくてはならない。このルールはわたしの生活の質を上げるが、彼女の健康状態を悪くしている。このことは長いこと考えていたのだが、わたしは見て見ぬふりをつづけてきた。でも、1日風呂に入っていないからと言ってなんだと言うのだろう。死ぬわけでもなし。でも、快適な睡眠をとれなかったら病気になるかもしれないのだ。

 

ということで、彼女に「もう、いいよ。風呂に入れないくらい疲れていたら、そのままベッドに入っていい」と伝えた。ここで笑顔で言い切れたらいいのだが、わたしはそんなに立派な人間ではなかった。「顔と手と足を洗ったら」という条件をつけた。度量の小さな人間でごめんよ。徐々に寛大になるから。大きくなれ、わたし。

 

彼女がコーヒーを淹れてくれて、わたしの分のパンも焼いてくれた。それを軽めの朝食にして、彼女とNHKの「サラメシ」を見る。インド人が多く在籍するIT企業のインド人シェフの社食に関する内容で、ふたりで「インド料理食べたい」という話になって、今日の昼食はインド料理に決まった。ということで、近所のインド料理屋さんが日曜日も営業していることを確かめる。

 

洗濯をして、ふたりで洗濯物を干して、わたしは日記を書きはじめ、彼女は寝室で読書を始めた。日記を書き終わり、11時前にはふたりとも支度して、インド料理屋さんへ。このお店は京都市内にもいくつかある、チェーン店だが、一度も入ったことはないお店だった。ナンとカレーのランチがあり、ナン+カレー+サラダ+ドリンクが基本構成。わたしは日替わりカレーと好きなカレーを1種ずつ選べるセットが気になり、今日の日替わりカレーの中身を聞いた。このお店は店員さんが全員インド系の人たちで、どうやらそのうちのひとりしか日本語でやりとりができるホールスタッフがいないようで、伝言ゲームのようにして「今日のカレーはじゃがいもとカボチャです」という答えが返ってきた。新鮮。わたしは上記のセットにマトンのカレーを選び、パートナーはバターチキンカレーを選んだ。

 

パートナーはナンが美味しいとナンだけで食べてよかった

 

美味しい。ひさしぶりにナンを食べたけど、ちぎって浸けて食べるという動作も楽しい。もし仮に、一口大に切られたナンをフォークで刺して、あるいは箸でつまんで食べたとしたら、ここまで美味しくないと思う。また、最近はパートナーとお互いの時間が合わず、久しぶりに一緒に食事ができたので、いろいろと話せたのもよかった。食事しながらのほうが話しやすいこともある。店員さんたちはわたしにはわからない言葉でずっと喋っていて、異国にきたような気持ちになれていい。京都には海外の人がやっている飲食店がわりと多いのだが、あまり行っていないことに気が付く。もっと行ってみたくなった。大満足で店を出る。

 

ローソンに寄ったのだが、寄せ鍋がカップ飲料サイズで売っていてびっくりした。持ちやすい形ではあるのだが、容器が変わるとそれだけでおもしろい。

 

 

家に帰って歯を磨いて、彼女は美容院へ。わたしは仮眠をとる。そういえば、先ほどのインド料理屋さんでナンのおかわりをすすめてくれたのだが、迷った末に遠慮した。それがこの時になってお腹で膨れてきて満腹になってしまった。あの時2枚目を頼まなくてよかったと思う。その時の決断が英断かどうかは、遅れてからでないとわからない。

 

微睡む程度の仮眠だったが、それでも頭はスッキリした気がする。支度をして仕事へ。自転車で職場に向かっていると、いつも行く飲み屋での友人のYUさんとYUTさんに遭遇する。この日記では『陳情令』でお馴染み?のYUUさんである。出勤途中で、わたしのほうは自転車だったので、すれ違う際に手を挙げるくらいしか挨拶できなかったのだが、それでもばったり友人に会うのは嬉しいものだなあ。日曜日で天気もいいし、お出かけ日和だ。

 

仕事は滞りなく終了。でも、けっこう頑張った。

 

 

仕事が終わって深夜0時過ぎ。ここからわたしのバッテリー配送業開始だ。週末の夜ということで期待したのだが、マップを見ると近場に回収バッテリーは少なく、まあまあ距離があるところには点在している状況だった。運動にはちょうどいい距離だな、と作業を予約する。烏丸通りを北上して、それぞれコンビニで1個回収と2個回収の2箇所を回って計3個の回収を行った。今日は1個も補充をこなせていないのだが、深夜は補充依頼が減るし補充ノルマも動機づけ程度のものなので、第一目的である運動不足解消のためにも今夜は回収だけを行うことにした。

 

しかし、運動して1時間弱、お腹が減ってきた。どこかで夜食を食べたい。しかし、時刻は深夜1時と遅く、やっているお店は限られてくる。マップを見て、木屋町の方角に回収スポットがあった。そこを回収してから、木屋町でまだ営業している飲食店でご飯にしようと決めた。

 

次に向かったのは東山三条にある某有名ホテルだった。入口まで行ってみるが、自動ドアが開かない。当然だ。深夜だし。しかし、SpotWORKのネットアプリ上では24時間営業と記載があり、「御用の方はインターホンを押してください」という自動ドア横の文言の前で少し悩んだ。従業員の人はもちろん起きているのだろうが、バッテリー1個回収したいという部外者が深夜に訪問するのはご迷惑ではないだろうか。でも、これだけ大きなホテルであれば、そのあたりの対応について心配されるまでもないのか。とりあえず、入れてもらえるかどうかだけでも聞いてみようとインターホンを押した。

 

「ご宿泊のお客様ですか?」との返事だったので、「夜分遅くにすいません。宿泊者ではないのですが、Charge SPOTのバッテリーのメンテナンスにまいりました。」と伝えると、すぐにドアが開いた。何か言われるかと思ったのだが、自然にバッテリースタンドの位置まで教えてくれた。深く頭を下げて、ホテルを出た。ご迷惑だったかはわからないが、深夜にドアの閉まったホテルで作業するのは初めてだったので、これも経験だ。今回は大手ホテルという部分に甘えてしまったが、ホテルの規模や指示に対しては作業を諦めることも視野に入れて柔軟に対応しなくては。

 

木屋町まで自転車を走らせる。木屋町京都市内でも夜遅くまでやっているお店の多いいわゆる歓楽街で、わたしもこのエリアの飲み屋には日々お世話になっている。深夜でも木屋町はまだまだ路上に人がたくさんいて(客引きっぽい人もいるが)、活気があった。わたしはお腹が減っていたので、前に一度行ったことのあるD場というお店へ。

 

このお店は深夜3時まで開いていて、しかもおにぎりなどのご飯も食べられるのだ。入ると店主のMさんが「お、レボが閉まってるから?」と快く入れてくれた。そう、わたしのよく行く西木屋町のレボリューションブックスという立ち飲み屋さんが先週、臨時休業に入った。店主のNさんが負傷したということで、わたしも心配している。

 

「仕事終わりでお腹減っちゃって」とお店に入る。U字型のカウンターではすでに完全に首がダメな角度まで曲がったまま寝入っている男性がひとり、その隣に座った人とMさんは喋っていた。うん、深夜の木屋町の飲食店の日常の光景だ。

 

わたしがコートから3個のバッテリーを取り出すと、Mさんから「はよ返しやー」と言われた。「返す仕事をしてます」という説明をする。やはりこの話題は一定の引きがあるので、ひとしきり盛り上がった。その点でもこの遊びの魅力はある。やっぱり普段身近にあるサービスがどうやって運用されているか知るのは楽しいのだ。

 

D場ではズリ皮ポン酢と、今日がひな祭りだったのでメニーにあった、ちらし寿司をいただいた。お腹が満たされてありがたい。飲み屋ではツマミばかりを食べて、あまりご飯ものを食べないので普段はあまり注目していなかったが、深夜にもこういう需要があるのだな。

 

他のお客さんとMさんと、花粉症の話や珍しいお肉の実食体験談、そのうちのひとりがアメリカの人だったので、アメリカで食べた珍しいお肉やアメリカのおもしろCMの話を聞いて動画も見せてもらった。アメリカのCMはかなり古い物でも相当なインパクトがあり、最近日清のカレーメシがやっているような奇抜なセンスのCMも既にやり尽くされているのだと知った。おもしろい!

 

お腹も満たされ、再度マップを開くと、京都の街も眠り始めたのか、また3個単位の依頼がちらほらと出てきていた。そこでお店を出ることにした。レボリューションブックスのNさんの負傷と臨時休業のことをMさんも心配していたので、営業が再開したら伝えようと思う。D場もそうだが、できるだけお店の人が楽しく健康に営業を続けてくれたらうれしい。そのおかげでわたしのような客は楽しく暮らしていけるのだ。

 

家の方向に絞って、依頼の予約をして自転車を走らせていく。疲れもたまってきたが、ご飯を食べて元気になったのでスイスイと作業をこなす。コンビニで3個、1個、3個の回収依頼をこなし、そこから二条城の北にあるホテルへ。こちらのホテルは自動ドアが開いていたので、インターホンでバックに控えている人を呼び出す必要がなかった。深夜のホテルもいろいろだ。

 

深夜3時にやっと家に帰った。足も手も指先が冷え切っていた。今回は以前の反省を活かして、イヤーマフとニットキャップを持っていったので頭部は冷やさずに済んで寒い中でも回収を続けることができた。またお腹が減ってきたので、帰り際にコンビニでちょっとおつまみを買ったのだが、まずはシャワーで体を温める。

 

風呂から上がってビールを1杯。NHKも放送を終了いていて、休止時のカラーバーが放送されていた。晩酌のお供は、先日さわりだけを見て、気になっていた映画『アメリカン・フィクション』。

 



 

映画『アメリカン・フィクション』は、

 

作品に「黒人らしさが足りない」と評された黒人の小説家モンクが、半ばやけになって書いた冗談のようなステレオタイプな黒人小説がベストセラーとなり、思いがけないかたちで名声を得てしまう姿を通して、出版業界や黒人作家の作品の扱われ方を風刺的に描いたコメディドラマ。(参照元:映画.com)

 

このあらすじでは「アメリカでの黒人文化の需要のされ方」が物語のメインかと思ってしまうかもしれないが、話の筋のひとつでしかなく、メインは普遍的な家族ドラマだった。もちろん敢えての作りで、そこで描かれている家族の絆や家族間の人間関係や愛情の問題というのは人種も国も関係ない普遍的なものであり、誰の人生でもあり得る種類のものだ。しかし、人種というレッテルを貼ることで取りこぼしてしまっているものでもある。

 

正直、風刺的なコメディを期待して見ていたのだが、心が温まり自分の考え方を省みて考えさせられるようないい映画だった。今日は偶然、ほんのわずかではあるが、海外の文化に触れた1日だったけれど、そこにいるのは「異文化」なんてわかりやすい見方ではくくれない文化のなかで実際に生活をしてきた「普通の人々」であり、わたしと変わらない、しかしまったく違う人々だ。それだけは忘れてはならないなと考えた。

 

長い1日だったが、体も動かせて濃密で、いい映画も見られて、楽しい1日だった。