いぬのいる島

日々、散歩しては迷っている

3月19日(火) 新しいチェーンの気持ちよさと、ひさしぶりに無慈悲な依頼取り消し

 

朝7時前に起床。いつも通りコーヒーを淹れようと思ったが、水道水をポットに入れるのをやめる。日記では書き漏れていたけど、わたしの住んでいるマンションでは昨日、貯水槽の清掃があり、お知らせの紙に「槽内を消毒するので、3日間ほどは飲料用にはできるだけ直接水道水を使わないで」という旨が書いてあったのを思い出した。普段は水道水を沸かしてコーヒーを淹れているが、浄水ポットの水を使って湯を沸かす。そういえば昨日の料理は普通に水道水使っちゃてたな。まあ、死なないだろう、ととても無責任な考え。わたしの危機管理レベルなんてこんなものだ。むしろ、水を変えたらコーヒーの味が変わるのかどうかの方が興味がある。わたしはコーヒーにも水にもそれほどこだわりがないので試したこともなかった。飲んでしばらく味わってみる。……よくわからない。水の違いがわかるほどわたしの舌は敏感ではないのはわかった。

 

タツに入って日記を書いていると、やがてパートナーが起きてきた。パートナーに「今日のコーヒーの味、いつもと違う?」と聞いてみたが「変わらん」とのご返答。朝ご飯に昨日Yさんからいただいた薪火野パンを焼く。薪の香りがするパンは火を入れるととても甘くなり、とても美味しい。ふたりで「美味しい、おいしい」連呼しながら食べた。

 

支度をした彼女が出ていき、わたしは皿洗いを済ませて、昨日の映画の続きを見る。ピーター・グリーナウェイ監督、すごい変態監督だ……(褒め言葉)。大好き。

 

今日は昼からの仕事だったので、仮眠をとろうかとベッドに寝てみるが眠れない。しばらく横になっていたけど、手持ち無沙汰になってスマホでSpotWORKのマップを開く。するとそう遠くない距離に回収バッテリーの依頼を発見した。どうせ眠れないので、支度をしてそのままバッテリーの回収にいくことにした。

 

顔を洗って服を着替える。荷物をリュックに入れて、昼食に昨日の残り物の野菜炒めと味噌汁でごはんを食べて出発。外は天気はいいけど風が強くてまだ寒かった。昨日交換してもらった自転車のチェーンの動きが滑らかで漕いでいて気持ちがいい。踏む力が自転車の駆動部分にスムーズに伝わって、一体感を感じる。自分の身体が延長された、というのは言い過ぎだが、いつもと違う体の動きの感覚が、おおげさだがちょっとだけ世界の味わい方が広がったように感じられて、とても心地いい。

 

千本中立売りのコンビニエンスストアで回収の作業をこなした。4個の回収。花粉で鼻水が垂れてしまうのだけがしんどい。お昼どきはどこのコンビニもお弁当を買いにきたお客さんで混むので迷惑をかけないように気をつかっているのだが、店員さんは忙しいなかでも丁寧に対応してくれた。ありがとうございます、と伝えて、店を出た。

 

またマップを開いてみると、近くのホテルで補充の依頼があり、出勤する道すがら作業をしていくことにする。しかし、このホテル、スマホの地図上の名前と実際のホテル名が違っていて、ほんとにここでいいのか不安になる。このホテルの滞在者であろう外国人の一家が、わたしのことを不思議そうな顔で遠巻きにみつめている。わたしが不安ながらもこのスポットで合っていたことを確かめて、バッテリーを補充すると彼らは「oh」と言って腑に落ちた様子でホテルを出ていった。

 

鼻水を垂らさないようにしながら出勤(汚くてすいません)。今日の勤務時間は少し長めで内容もややハードワークなので、仕事前のバッテリー作業がどう影響してくるか少し不安だったけど、結果としては体が温まっていい感じだった。

 

 

仕事が終わって22時ごろ、もう少し自転車を漕げそうだったので、職場を出てマップを開く。木屋町で回収3個の依頼だ。さっそく行ってみる。京都の木屋町は繁華街で飲食店や娯楽施設が多く、夜の方が昼より人通りが多い。京都の道は細いので自転車で目的地までいくのは一苦労だと判断して、近くの駐輪場に自転車を停め、お酒が入ってご機嫌な様子でふらふらと歩く老若男女の人混みをかき分け、歩いてカラオケ&ダーツバーのお店へ向かう。はじめていくお店だ。わたしはこんなパーティー!的なお店には近寄らないので、けっこう新鮮。娯楽施設がたくさん入ったビルの4階に上がる。エレベーターのドアが開くとすぐに店内という作りで、正面にあったバーカウンターでは女性がカラオケを熱唱していた。カウンターにいた店員さんに「1人?」と指を1本立てながら尋ねられたけど、スマホの画面を見せて「バッテリーのメンテナンスにきました」と伝える。

 

バッテリースタンドの位置を指差してもらって、作業をしようと画面を見ると、「バッテリー数が変動して作業依頼がなくなりました」の表示だ。やられた……(誰にだ)。しかし、仕方がない。せっかく来たけど徒労に終わったようだ。悔しい!スマホの画面を見て落ち込み、なにも作業をせず頭を下げて帰っていくおじさんを見て、お店の人たちは不思議そうな顔をしていた。できるだけお店の楽しい雰囲気に水を差さないようにしたつもりだけど、落ち込み顔だったかもしれない。申し訳ない。

 

残念な気分で、また人混みに揉まれながら駐輪場まで戻る。心が折れそうだったが、せっかくここまで来たのに成果がゼロでは帰れない。祇園の高級そうなレストランに1個だけ回収の依頼が出ていたのでその作業を予約した。

 

祇園はピークタイムを抜けたようで送迎のタクシーは多くても、歩く人は少なかった。自転車を漕いで向かうと、もうすぐ閉店するであろうレストランに着いた。ジーンズにモッズコート、靴はビンディングシューズという出立で、こんな高そうなお店に入るのは気が引けたが、わたしも背に腹はかえられぬ。超低姿勢でご挨拶をしてバッテリーを回収した。お店の人たちはコンビニの人たちとは違って、この作業自体をよくわかっていなかったようだが、人当たりがよくて「高級店の余裕」を感じざるを得なかった。でもおかげで作業はしやすかった。

 

自分に課している補充ノルマはあと3個だったのだが、もう疲れたので帰る。昼間も自転車を漕いだし運動としてはいいだろう。スーパーで缶ビールを買って、家に帰る。パートナーはとっくに家に帰っていると思っていたけど、わたしが帰ると、まだ彼女は帰っていなかった。

 

キッチンでビールのアテに、厚揚げに焦げ目をつけていると彼女が帰ってきた。残業をしていたようだ。彼女は蕎麦を買ってきていた。わたしは厚揚げを焼いて、その上にネギをのせ、鰹節、揚げ玉、紅生姜、お好みソース、マヨネーズをかけてお好み焼き風にしておつまみとした。わたしは食卓で、彼女はこたつで遅い夕食をとる。彼女は「わさび入れすぎた!」と苦悶の表情で蕎麦を啜っていた。

 

お腹がいっぱいになって、ふたりでこたつに入っていたけど、明日が雨模様だという話になり、わたしは干しっぱなしになっていた洗濯物を取り込んで畳む。彼女は食器を洗ってくれることになった。

 

家事を終えて、わたしは風呂に入り、上がってからは『カラマーゾフの兄弟』を読む。眠気がきたので1時半ころに就寝。