いぬのいる島

日々、散歩しては迷っている

5月12日(火) 大人は自分の歯をもらえない

 
 7時のアラームで起きた。今日もそうだが、なにか時間の制限があるなかプレッシャーに押しつぶされそうになるような夢をここ最近見ている。それはここのところ、毎日寝る前に『まんが道』を読んでいるせいかもしれない。
 
 とにかく起きて、目が覚めるまでコーヒーを飲む。
 
 本日、わたしと同居人のAちゃん(おばあさんのいる実家から自主隔離中)は11時と11時半に同じ歯医者の予約があった。9時に起こしてと言われていたので起こす。でも起きない。Aちゃんは驚くほど眠りへの執着が強く眠るのが得意なので、眠るのがあまり得意ではないわたしは「眠りの天才」と密かに呼んでいる。しかし、このままでは寝過ごしてしまうので、昨日パン屋で買ってきたパンを鼻先に近づけて嗅覚から攻めることにする。さすがに睡魔に襲われていても匂いは感じるようだ。Aちゃんは笑いながら起きた。
 
 歯医者では、受付でおでこに当ててピッとするやつで体温を計り、指には洗濯バサミみたいな機器で血圧?心拍?を計測して、異常がないことを確認したうえで診察が行われるとのこと。受付を担当する看護師さんも先生もマスクの上にアイウェアとフェイスシールドをつけていた。待合室でしばし待つ。ネットで時間は予約済みなので、いつもはあまり待たないのだが、今日はすこし待った。その間、昨日誠光社さんから届いた『村を守る不思議な神様2』を読む。道祖神信仰おもしろいなあ。後で聞いたら、先に予約して診察してもらっていたAちゃんの麻酔が効くのに時間がかかって、それで後ろまでずれ込んでいたそうだ。
 
 案内されて施術椅子に座り、「左側の奥歯から3~4本目が上下ともに痛む」というと、チェックが始まった。なにか紙のようなものを挟んで歯ぎしりするよう指示される。先生は一旦離れる。隣がAちゃんのブースのようで、Aちゃんは虫歯のあった親知らずをもう抜歯をして、見せてもらっているところだった。「おお」と声が聞こえる。そして、抜けたところは血が固まってかさぶたになるのでうがいは控えめに。また麻酔が効いているので2時間は熱いものを感じれないので、あまり食べないようにと言われていた。座っていると、施術の終わったAちゃんが、よだれかけを首から下げたわたしの脇を通り抜けていった。謎の目配せをしてきた。なんだそれ。
 
 先生が模型を持って戻ってきて、説明を始める。要は虫歯の痛みではなく、わたしが集中したり、ストレスを感じているときに一番噛み締めて圧がかかっているのが現在痛い箇所で、少し歯もぐらついているとのこと。なのでかみ合わせのために少し削るとのことだ。ほんとうに少し削って終わる。びっくりするほど楽になる。ストレスだったのか……。最近、あった頭痛もこれが原因かもしれない。頭が痛むのも頭の左側だったし。
 
 帰り道にAちゃんに抜歯は痛かったかと聞くと、麻酔が効くと確信が持てるまで相当粘ったので、そうでもなかったらしい。そこで「歯はもらってきた?」と聞くと、「えっ!もらえるんや?」と聞き返されたので、「前に抜いたときにはくれたよ」と返す。すると、Aちゃんは「もらいたかったなー」と言い、どうするのか聞くと、虫歯を戒めとして、それを繰り返し見ては、しっかり歯磨きをするのを誓うのだ、と言う。
 
わたしのもらった時の記憶を思い出す。ん?よく考えたら大人になって歯を抜いたことない!おそらく抜いたのは子どもの頃で、それは乳歯だったのだろう。「子どもの歯が抜けたら、次に生えてくる歯が丈夫でありますようにとかお願いしながら、屋根の上に投げる」という風習が我が家にもあり、(ほかの家にもあったのか?)虫歯があった乳歯をカメラのフィルムケースみたいなのに入れてもらった記憶があった。それを最近の記憶のように思っていたが、勘違いだった。大人は自分の歯はもらえないのだ。Aちゃんは「それでも、もらいたかったなー」と言っていた。
 
 Aちゃんは麻酔のせいか眠いそうで、ベッドに寝転んび、寝るのかと思っていたら漫画を読んでいた。わたしも『まんが道』愛蔵版の3巻を読み始めた。
間でお腹が減ったのでバゲットを切って焼いてハチミツを塗って食べる。合間でちょくちょく別のことをしながら1150ページ以上ある『まんが道』を読み終わったら16時になっていた。Aちゃんは上司から連絡があって、明日が出勤になり、唸っていた。
 
 今日はレボリューションブックスさん( ) のテイクアウトで夕飯にすることが決まっており、ほかにも買い出しの用事があったので、17時に家を出た。自転車で烏丸通りを北へ。三条の大垣書店に寄る。『クリティカル・ワード文学理論』というフィルムアート社から3月に出た本が気になっていたのだ。でもなかった。
 残念だが、ゼスト御池に行き無印良品でボトルとティッシュと葵の歯磨き用コップなどを買い、望みをかけてゼスト御池内のフタバ書店へも行ってみる。店員さんに検索してもらったところ、在庫なしで取り寄せ扱いとのことなので残念だが、諦める。
 
 それからレボリューションブックスさんへ。ここは立ち飲み屋なのだが、お店と店主の西谷さんの雰囲気が大好きで去年あたりから通わせてもらっている。料理もとてもウマいのだ。西谷さんはテイクアウトの準備をしてくれていた。近況を話して、「長い目でやっていくつもりの覚悟しとかなあかんすねえ」と話す。メガネをかけた女性がひとり入ってきた。この方は何度かレボリューションブックスさんで飲んでいた頃に見かけたことがある方だ。常連さんなのだろう。この日から始まった新型コロナ対策セルフサービス飲みをご利用されていた。テイクアウトの「燃える闘魂カレー」と「アブラダレ炒め麺」を受け取って「また来ますー」と言って帰った。帰りのリュックの中が温かい。猫とかの、動物を入れているみたいだった。マンションのエレベーターで中身が漏れてないかと確認したら、ビニール袋の中で少しだけ漏れていた。
 
 家に帰り、せっかく温かいものなので食べようと容器を拭いて夕飯にする。カレーはマドラスカレーほどは癖がなくて、家のカレーに近いまろやかな感じ。でも、じんわりとした辛さがあって、とても美味しく量もちょうどよかった。満足。Aちゃんのアブラダレ炒め麺も分けてもらう。とても味が濃くて、油そばここにあり!という主張がとても美味い。でもAちゃんは歯が抜けた違和感で、噛みづらいようで、格闘していた。
 
 天気のよい1日だった。